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土壌団粒の水持ちと水はけ

今回は、土壌団粒の水持ちと水はけが良いという相反する状態の説明についてです。

良い土は、水持ちが良く水はけが良いと言われますね。

これら要素は相反する矛盾する項目です。この仕組みも土壌団粒が影響しています。

ではなぜ団粒構造があるとこれらが可能なのでしょうか?その仕組みを見ていきましょう。

 

まず、前回のミクロ団粒とマクロ団粒の違いを簡単に復習します。

ミクロ団粒は、250µm以下の非常に小さな団粒の塊で、粘土粒子と腐植が結合した有機・無機複合体(腐植・粘土複合体)と植物破片とが、微生物(細菌)の出す粘物質によって結合されている状態のことです。ミクロ団粒は耕起等の影響を受けにくく、微生物分解を受けにくいので長期的に安定しています。

 マクロ団粒は、250µm以上の少し大きな団粒の塊で、多くのミクロ団粒が集まって出来ています。植物破片などの有機物と糸状菌菌糸が結びつきより大きなマクロ団粒となっていきます。マクロ団粒は有機物と絡みあっているため微生物分解を受けやすく、そのため分解されやすいが、その後新たな有機物と結びつき、再びマクロ団粒を形成します。

 

上記2つの団粒の説明が前回の内容ですが、これらミクロ団粒とマクロ団粒は、有機物や土壌粒子が絡みあっているものなので、当然ぴったり隙間なく、くっついているわけでもなく、『隙間』があり、そこには水や酸素が満たされていたりします。この隙間のことを、『孔隙』といいます。

 ミクロ団粒が一番小さいので、ミクロ団粒内の孔隙が一番小さく、次いでマクロ団粒内の孔隙、そして団粒と団粒のあいだの大きな隙間(粗大孔隙)に分けられます。

ミクロ団粒の孔隙は、非常に小さいので『毛管孔隙』と呼ばれ、それ以外、ミクロ団粒とマクロ団粒の間、マクロ団粒内の孔隙、粗大孔隙は全て『非毛管孔隙』と呼ばれます。

この違いは何かというと、毛管孔隙内の水は流れにくく内部に留まっているが、非毛管孔隙内の水は、重力水といって、内部に留まることは出来ずにすぐに流れ出てしまいます。ということは、大雨や大量の水遣りをした直後は、毛管孔隙内も非毛管孔隙内も水で満たされた状態となるが(孔隙内全て水で、酸素はない状態)、その後ミクロ団粒以外の孔隙の水=重力水は徐々に排出され、およそ24時間後には全て排出され流れ出てしまいます。水が流れ出たところには酸素が入りこみ、植物の根が呼吸を行える様になります。24時間以降は、ミクロ団粒内の毛管孔隙にしか吸収出来る水はないので、その後水遣りや降雨がなければ残念ながら、いずれ植物は枯れてしまう運命を辿ります。このことが水持ちと水はけを両方備える土壌の特性を示しています。

 

 土壌団粒が発達し、ミクロ団粒、マクロ団粒が多く発達し有機物が多い状態であるならば、ミクロ団粒内の保持される水分が多いほど水持ちが良く、マクロ団粒より大きな隙間が多ければ多いほど、水持ちも良く水はけも良いという相反する土壌の性質が生まれます。これが腐植が多く、団粒構造の発達した土が良いとされる理由の一つでもあります。

ということは砂質の土は、有機物が分解されやすく団粒が発達しにくので、団粒内の水を保持できる孔隙が少ないため、水持ちがわるく、しかし砂粒子が大変多く存在しているので水はけは非常に良いとなります。逆に粘土では、粘土粒子ばかりで団粒が発達していないので、水を保持する力は強力ですが、肝心の孔隙=水を排出する隙間がないので、一向に水がはけていかない状態となるのです。この様に土壌の性質と水との関係が分かります。

尚、24時間経過後重力水は大方排出されてしまいますが、すぐに水遣りが必要というわけではありません。ミクロ団粒内の有効水分を、しおれ点までは使えるのでそれまで枯れることはありません。このことが、水持ちに関係することであり、水遣りの回数や頻度は、土壌の状態と植物の特性に合わせて行わないといけません。乾燥気味に育てるのであればしおれ点の見極めが重要になります。初期、永久しおれ点に関しては、またの機会に詳しく説明したいと思います。

 

 まとめると、

・腐植を多く持つ団粒構造の発達した土には、ミクロ団粒やマクロ団粒内に様々な大きさの隙間=孔隙を持つ

・ミクロ団粒内の孔隙は毛管孔隙、それ以外の孔隙(マクロ団粒内など)は非毛管孔隙と呼ばれる

・毛管孔隙内の水分は排出されることはないので、長く植物に利用される

・非毛管孔隙内の水分は、重力水といって24時間経過するとほとんど排出され代わりに酸素が入ってくる。根が呼吸出来る様になる。

・水持ちは毛管孔隙内の水分、水はけや通気性は非毛管孔隙内の水分と関係している

 

腐植を持つ土壌は、水持ちが良く、水はけが良い=かわりに空気も含むので根の張りが良くなり、やはり植物を育てる土壌として最適な土壌なのがわかります。