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ミクロ団粒の内外に棲息する微生物と土づくりの関係②

 前回はミクロ団粒の内と外に棲息する微生物の種類と大きさを見てきました。

 今回は、ミクロ団粒の内側と外側での微生物の棲息の違いとその影響についてです。

 

◎ミクロ団粒の内部に棲む微生物では?

 

 ミクロ団粒の内側と外側では微生物の環境は異なります。なぜなら、ミクロ団粒の孔隙は、0.2~6µm程度でとても小さく、この大きさは細菌とほぼ同程度だからです。ですから、細菌はミクロ団粒の内側の孔隙に棲むことが出来ます。

 

 しかし、糸状菌以上の生物は細菌よりも大きいため(10µm以上)、ミクロ団粒の内部に入ることは出来ません。このため、ミクロ団粒の内部には、主に細菌が生息し他の大きな生物から捕食されることなく安定して生息できることが出来ます。さらに、もともとミクロ団粒内は毛管孔隙で、重力水という降雨や水遣り等の影響で保水されたり、排出される非毛管孔隙とは違い、一定に水分は蓄えられるので、水分変動が小さいこともあり、安定して棲息出来る環境にあります。

 

 また細菌は多糖などの粘物質であるEPSに包まれている場合が多く、EPSは水分を含んだゲル状の物質をしています。これらEPSに包まれた細菌は水分変動に対して耐性を持つので安定した状態でいられます。それと、同時に、細菌細胞の外側で、EPSが土壌粒子を結びつける接着剤の役目をはたしているので、ミクロ団粒自体を安定させている要因になっています。またミクロ団粒内には、外部から毒物も入りにくいので、これもミクロ団粒の細菌を安定させている理由となっています。

 

以上のことから、ミクロ団粒内にとって、細菌は非常に安定していて、長期的に生存出来る環境にあると言えます。このことが、土づくりにおいて、細菌の数を増やし、安定させる目的で堆肥等を投入したり土壌団粒を増やす目的であったり、細菌の数が多い方が土づくりにおいて有効的だと言われる理由でもあります。

 

◎ミクロ団粒の外部に棲む微生物では?

 

 ミクロ団粒の外側の非毛管孔隙には、糸状菌や原生生物とともに細菌が棲息しています。非毛管孔隙は重力水なので、水が満たされたり排出されたりと水分変動が起きます。このためミクロ団粒外部では、水分変動によって大きな影響を受け、棲息環境が常に変化します。。

 

→降雨によって、水分豊富になると

 

・細菌が活発化し増殖

・次いで、原生動物が活動的になり、細菌を捕食

・糸状菌も菌糸を伸ばすが、細菌や原生動物の活動の影響下、活動を停滞させる

 

→次に、乾燥するにつれ

 

・原生動物が休眠状態になる

・細菌も活動が抑えられ、胞子を形成するか死滅する

・半面、糸状菌は少し湿度の低い状態でも耐性を持っていて、活動的になり菌糸を伸ばす

 

→その後、さらに乾燥すると

 

・糸状菌も胞子を形成するか活動を控える

 

→→→以上の様に、水分状況によって活動内容が変化する。

 

 また、ミクロ団粒の外に棲息する細菌や糸状菌は、有機物を分解し、その分解物をエネルギー源として、増殖をしています。その増殖の過程で上記でお話しした様に、細菌・糸状菌ともに粘物質を作りだし、ミクロ団粒を結合しています。なお、ミクロ団粒外では、糸状菌の割合が多くなることから、糸状菌菌糸のねばねばした網袋の様な状態を形成し、ミクロ団粒の結合に大きく影響を与えています。

 

 糸状菌は大きいので、ミクロ団粒の外側に存在するが、細菌はミクロ団粒の内部にも、外部にも両方存在します。

しかし、ミクロ団粒の内と外で存在する細菌の種類は異なります。しかし、土壌中の細菌の約90%はミクロ団粒の内部に存在しています。また、同じ細菌同士が同一のミクロ団粒の孔隙に存在するため、ミクロ団粒毎に異なった細菌の環境が形成されています。また、細菌と糸状菌を比べた場合、はるかに細菌の方が多様性が高いとされています。土壌中10gに対して細菌の数は640万種とも言われています。

 

まとめると、、、

 

 ・ミクロ団粒の内部には、細菌が安定して棲息していて、ミクロ団粒を非常に安定させている役割を担っています。

 ・ミクロ団粒の外側では、主に糸状菌以上の生物が互いに棲息しているが、水分環境(重力水)によりその活動は変化します。

 ・糸状菌菌糸がミクロ団粒同士を結びつけ安定させています。

 ・マクロ団粒は崩壊しやすく不安定だが、ミクロ団粒は非常に安定しています。

 ・糸状菌より細菌の方が多様性が高い。

 ・土づくりにおいては、糸状菌・細菌とも微生物の活動を活性化させるための方法が効果的だが、その中でも特に、細菌の活動が活発的になる様に土づくりを進めていくと土壌の団粒構造が発達し安定した土となります。