· 

敷き藁のマルチング効果について

 前回、マルチングの効果と種類について述べました。

その中で、今回は【稲藁=イネワラ】に関して注目してみようと思います。

 

マルチングに関して効果は

 

・地温の調整 ・水分の蒸発の防止 ・土や肥料の流亡の防止 ・土壌侵食の防止

・泥はね等による病害虫の防止

 

 これらの効果がありましたね。

 

 稲藁に関しては、これらの中でも特に

地温の調整水分の蒸発に対して高い効果があります。

 

 夏場の高温期、近年は物凄い酷暑となる日が多いですね。

そんな日照りが数日続くと土はカラカラに干上がってしまいます。

そんな時に、稲藁を敷いておくと

 

1. 土壌が直射日光で高温になるのを防いてくれる。

2. 土壌から水分が蒸発しない様に藁が抑えてくれる。

 

 これら夏に想定される効果は、ビニールマルチより遥かに高い効果があります。

 

 また、稲藁は有機物ですので、収穫後にビニールマルチと違って廃棄物(ゴミ)にはなりません。

土壌に鋤き込めば土壌改良材として土を耕してくれるものとなります。

また、稲にはケイ酸が含まれていて土壌団粒や腐植化を手助けしてくれたり、

水溶性のカリ成分も補ってくれるといった補助的な効果もあります。

 

 さらに、前回マルチングのデメリットで述べた追肥が施しにくい…といったこともありません!

なぜなら、稲藁は隙間があるのでちょっと手で避けてあげれば、容易に株元や土に手が届くことでしょう。

 

 冬は、霜や寒風に対しての予防や土壌の凍結を防止してくれます。

しかし、冬の効果は黒マルチの方が効果は高いでしょう。

その辺りはご自身の栽培や好みの問題もあると思います。

 

 

 そして、稲藁を敷き藁としてマルチングに使う際、以下の注意点が考えられます。

 

 

1.地温の上昇に対しては、逆効果となる場合があります。

  秋から冬にかけては太陽光を遮断してしまうので地温の上昇に逆効果となってしまいます。

  秋口でまだ地温を上げたり確保したい場合には向かない場合もあるでしょう。

  (完全に冬場の低温時にはある程度の保温対策にはなる)

 

2. 稲藁はC/N(>60以上)比がとても高く、堆肥等に比べ分解にとても時間がかかります。

 

 一般的にC/N比=20程度が堆肥の目安ですが、それより高いと、土壌中で分解時に他の窒素を吸収して自身(稲藁本体)の分解に利用してしまう窒素飢餓が起こってしまう可能性が出てきます。せっかく基肥や追肥で肥料分を投入してもそれが作物に利用されずに稲藁の分解に利用される形となってしまう恐れがあります。なので、稲藁をあまり大量に土壌中に鋤き込まない。また鋤き込んだ場合は、すぐに次の作付けには入らず、土中であらかた分解させ土と馴染ませる必要があります。(2週間~2か月程)

ただ、十分に分解されれば土壌改良効果もあり、捨てずにエコな使い方となります。

 

3. 敷き藁はとても軽く、風で飛ばされやすいので、何かで抑えたり固定したりする必要があります。

 

 

 以上のことから

 

稲藁の最適な使い方は、春から夏の栽培でのマルチングが適等であるでしょう。

 

 春に敷き藁として施しておけば、梅雨の長雨から、土壌侵食や流亡、泥はねによる病害虫から作物を守ってくれます。

そして、夏の高温期は、土壌が高温になるのを防いでくれるとともに、藁が水分を含むことによって乾燥から防ぎ水分量を調整してくれることでしょう。

 収穫後は、土に還せば、土壌の中で分解し土を豊かにしてくれることでしょう。夏から秋はまだ気温が高いので有機物の分解に適した温度が続くでしょう。(有機物は25℃前後が一番分解されやすい)逆に、冬から春だと低温のため、藁の分解が進みにくいということもあります。

 土に還した後は、すぐに作付けを行わずゆっくり藁の分解を待つ時間を確保出来るとなお良いと思います。

 

 冬の保温では、黒マルチ等の方が良いかもしれません。

冬の保温で使う場合は、栽培方法との相性を考えて注意して使う必要があります。

ですが、何もしないよりは、霜や低温に対して効果はあると言えるでしょう。

 

 最後に、稲藁の入手に関して、稲藁はもともとどこの農家にもあり身近なものでした。

農家さんの近くの環境なら大量に安価に入手可能でしたが、近年では稲藁を天日干したりする景色も少なくなった様に

なかなか簡単に入手することも出来なくなってきました。

ビニールマルチとコストを計算してあまり割高とならない様に入手する必要があります。